ベンジャミンバトン

80歳で生まれ、若返っていく… 数奇な人生を生きた、ある男の物語…
 
私は数奇な人生のもとに生まれた――。「グレート・ギャツビー」で知られるF・スコット・フィッツジェラルドが、1920年代に書いた短編を基にした『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は、こうして幕を開ける。それは80歳で生まれ、年をとるごとに若返っていく男の物語。ほかの人々と同じように、彼にも時を止めることはできない。
第一次世界大戦末期の1918年にニューオーリンズで始まり、21世紀へと続く彼の人生は、たとえようもないほど不思議なもの。“普通”とは言い難い彼は、出会った人々や場
所を心に刻み、愛と出会い、愛を失い、生の喜びと死の悲しみに震えながら、壮大な旅を続ける。
生まれてすぐに捨てられたベンジャミンに、無償の愛をくれた育ての母。外の世界へ飛び出し、誘われるまま乗った船で仕事をくれた船長は「自分の信じる道を進め」と教えて
くれた。異国で出会った女性との初めての恋、初めてのくちづけ。第二次世界大戦で共に戦い、夢半ばで散った男たちと結んだ絆、名乗り出た実の父の死……ベンジャミンは自分に与えられたさまざまな機会をすべて受け入れ、そこで出会った人々と深くかかわっていくことに、生きる意味を見出していく。
そんな数え切れない出会いと別れの中で、ベンジャミンの人生を大きく変えたのは、生涯思い続けた女性、デイジーだ。互いに求め合いながらも、別々の時の流れを生きなければならないふたり。人生のちょうど真ん中で、やっとほぼ同じ年齢になったふたりは、互いを慈しむように強く優しく愛し合う。しかし、彼らは気づいていた。やがてまた、時に引き裂かれることを――そのとき、ふたりが選んだ人生とは? この世に、時を超えて残る愛は、あるのだろうか――?
ベンジャミンは知っていた。出会った人々と、いつか必ず別れることを。だからこそ、この一瞬一瞬を大切に生きたい――『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は、特別な運命を
生き抜いたベンジャミンの曇りなき瞳を通して、人生の素晴らしさを見せてくれる感動作である。
 
ベンジャミン・バトンを演じるのは、世界中で圧倒的な人気を誇るブラッド・ピット。その輝かしいキャリアの中で、アクション、コメディ、ラブストーリー、感動作と、すべてのジャンルの役柄を完璧に演じてきたピットが、今度は年々若返っていくという誰も演じたことのない役どころに挑んだ。ベンジャミンの生涯の恋人であるデイジーには、鍛え抜かれた
演技力と磨き上げられた美貌で、常に観客を魅了するアカデミー賞 女優、ケイト・ブランシェット。
監督は、『セブン』『ファイト・クラブ』のデビッド・フィンチャー。今の時代を代表するのはもちろん、未来の映画界を担う監督のひとりだ。本作では、フィンチャー監督が得意とする前代未聞の設定を入口にしながら、登場人物一人ひとりの体験を丹念に描き、観る人すべてが「これは自分の物語だ」と感じられるストーリーを紡ぎ出した。
 
拾った赤ん坊にベンジャミンと名づけて、我が子同然に深い愛を注ぎ続けるクイニーには、『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』のタラジ・P・ヘンソン。デイジーの一人
娘キャロラインには、『レジェンド・オブ・フォール 果てしなき想い』のジュリア・オーモンド。ベンジャミンを捨てたことを悔やみ続ける父トーマスには、『スナッチ』のジェイソン・フレミング。ベンジャミンが初めて恋におちる女性エリザベスには、『フィクサー』でアカデミー賞 助演女優賞を獲得したティルダ・スウィントン。
脚本は、『フォレスト・ガンプ/一期一会』でアカデミー賞を受賞したエリック・ロス。世界大戦など歴史のダイナミックな流れを時代背景に、人々の日々の営みの細部を描き出す才能を、本作でも存分に発揮している。気品溢れる音楽は『ライラの冒険 黄金の羅針盤』のアレクサンドル・デプラ。独創的な照明を駆使し、観る者の心に詩的な余韻を残す映像を手掛けたのは、クラウディオ・ミランダ。フィンチャー監督の『ゲーム』『ファイト・クラブ』では照明係を務め、今最も注目されている撮影監督だ。